驚愕の世界-食虫植物(Insectivorous plants)
驚愕の世界-食虫植物(Insectivorous plants)
とある温室植物園へ行き驚愕の植物\(◎o◎)/!食虫植物を見てきました。当ブログの読者の皆さんも一度は食虫植物を見たこと、あるのではないでしょうか。 日本でもモウセンゴケやムジナモやなど、自生している種もあるようですが、コウシンソウ(ムシトリスミレ)のように限られた地域にしか自生していないものもあるようです。 自生地の開発や環境の変化などなどにより絶滅危惧種に指定されている種も多く、天然記念物に指定されたりもしている。 しかし、近年では、品種の改良により園芸植物として販売されたりもしており、ブログ筆者も今年はこの不思議な食虫植物の園芸品種を育ててみようかなと思っています。
ブログ筆者が、今までに、見たことのある食虫植物をあげますと
などを植物園や植物園芸店などで見たりしました。植物図鑑やネットでも非常に詳しい解説や写真などを確認することができます。それだけに、かなり人気の高い植物といえます。 寒冷地から熱帯雨林、高山から低湿地や池と、世界中に分布しているようですが1) 先にも記したように日本でも自生している種や根付いて繁殖した外来種のタヌキモもよく知られています。 食虫植物という名前の通り、捕虫した昆虫を消化液で分解して溶かし、そこに含まれる栄養分を吸収し成長に役立てているらしいですが、元々植物なので基本は光合成によりエネルギーを獲得ということであります。
それでは食虫植物の捕食の方法ですが、 これが恐ろしい方法でしてだれがそうさせたのか、進化なのか、 植物の技とは思えないものばかりです。図1-3に捕虫の様子をイラスト的にまとめてみました。
以前に見たものよりかなり大きいのでオオーという感じです。長径30-40cmくらいでしょうか。 マレー半島やボルネオやスマトラに分布している雑草のような存在で、日本でいうと道ばたに咲く、ホタルブクロのようなものです。
学名:Nepenthes(ネペンテス)
科:ウツボカズラ科
原産:東南アジアの熱帯地域
捕食のスゴ技は落とし穴です。壺のような捕虫袋は落とし穴となっていて上にある葉は雨粒が入らないような笠の役割とそこに止まったハエを穴に落とす罠になっています。また、漏斗上の壺の縁に止まると滑って中に落ちるような仕掛けになっている優れものです(図1)。
蓋が開くまでは壺の中には消化酵素ネペンテシン(nepenthesin)2)やキチナーゼが溶けていて、そこに落ちた昆虫を溶かしてその養分や塩類を取込むらしい。 メカニズムは②や③の食虫植物と同じですね。酸性で消化液が含まれていることが特徴です。
図2に、タンパクデータバンク(PDB)に登録されているヒトの胃液に存在するペプシンとHIV-1プロテアーゼの構造をあげてあります。なぜかというと、ネペンテシンは酸性アスパラギン酸プロテアーゼに分類されますので、同じく上の2つは酸性アスパラギン酸プロテアーゼに分類されるからです。
ネペンテシンがHIV-1プロテアーゼと同じような基質結合部位を持てば、ウィルス研究にも使えるかもしれません。 今、問題となっている新型コロナウィルスに抗HIVウィルス剤が効くとの不確定な話もありますが、もしかすると、ネペンテシンも新型コロナウィルス阻害薬の開発に使えるかもしれません。図2に抗HIVウィルス剤のインジナビルが基質結合部位に結合した立体構造をあげました。また、昆虫の外骨格が図3のN-アセチルグルコサミンやN-グルコサミンの重合体のキチンやキトサンからでできており、これを加水分解するための特別な酵素キチナーゼが準備されています。 同じグルコースやその誘導体からできているわけですが、立体構造や置換基が異なるだけで、デンプンやセルロースとは作用が全く異なる不思議な世界です。
図4の写真はとある温室植物園の噴水で、奥に園が見えます。よく整ったきれいな公園の中にあります。食虫植物がある館は有料でした。図5は園内のウツボカズラの写真です。
②ハエトリソウ
ハエトリソウの原産は北アメリカの湿地帯で自生している種で、目立たず地味な植物のようですが、図6のような、 トラバサミで昆虫を捕らえるという驚きの植物です。 しかも、花も咲き実もなるのだからますます驚きです。
学名:Dionaea muscipula
別名:ディオネア
科:モウセンゴケ科
原産:北米
捕虫器の感覚毛に虫が触って、20秒以内に別の感覚毛にもう一度触る感覚が無いと捕虫葉は閉じないようだ。 そっかー、”ダルマサンガコロンダ”を2回数えればいいんだ。メカニズムは研究されていて捕虫葉の中にとげのような感覚器が備わっている優れもの。 捕虫葉の開閉はすごくエネルギーを使うため、捕虫のさいの空振りを防ぐためらしい。 品種の改良も進んでおり、いろいろな種類の観賞用を購入できるようです。 このハエトリソウにはダーウィン3)も夢中になったとか。
モウセンゴケは粘液が分泌している捕虫葉に昆虫が止まるとハエ取りリボンのように虫を粘着させ丸め込んで消化液で溶かし栄養分をとるというスゴ技を持っています(図7)。 しかもその粘着液は甘い香りの罠で昆虫を誘うのです。その消化液は強い酸性で人の胃で分泌される消化酵素のペプシンに似ていることが分かっています。 その他、酸性フォスファターゼやエステラーゼなどもその粘液中に含まれているようです。しかし、その腺毛の粘液には糖質を分解するアミラーゼを持たないとのことです。 まとめますと、
ヒトの場合
エネルギー
タンパク質 4 kcal/g ペプシン(特に胃液), トリプシン(膵液)
糖質(炭水化物主にデンプン) 4 kcal/g アミラーゼ(唾液、膵液)
脂質(リピド) 9 kcal/g リパーゼ(唾液、胃液、膵液)
モウセンゴケの場合1)
粘液中の主要な酵素
タンパク質 ペプシン様プロテアーゼ(pH2-3が至適pH、タンパク質を加水分解)
糖質(炭水化物主にデンプン) なし
脂質(エステル) 酸性ホスファターゼ(リン酸エステルを加水分解しリン酸を得る) エステラーゼ
光合成で糖を作りエネルギー源をまかない、捕虫からはリン酸塩、窒素化合物やカリウム(K)塩などを補っているようです。また、モウセンゴケの葉を乾燥させて得られる成分には抗炎症作用、気管支炎や空咳などを抑制する薬用効果1,3)があるらしいことから、 薬物開発としても少し注目の食虫植物かもしれません。
食虫植物は湿地帯や乾燥地帯や熱帯雨林地域と不毛な土地に生息しており、肥沃な土地に生息する植物より養分が得られにくく自然環境も厳しいため、このように光合成や根から養分吸収ばかりでなく、食虫植物となって昆虫から塩や窒素塩やリン酸などをとるように致し方なく進化を遂げてきたようであります。食虫植物という名前の響きや見た目でおそろしい感じの植物ですが、色もあでやかで、静かなたたずまいは観賞用に十分合う園芸植物かなと思います。昆虫を溶かすのにヒトと同じようにペプシンのような酸性プロテアーゼが用意されていて、また、キチンやキトサンでできている昆虫の堅い甲殻類はキチナーゼで加水分解するという優れた能力も持っています。 食虫植物を見た忘れられない一日となりました。
引用
1)Wiki
2)https://www.youtube.com/watch?v=eFIZEUi0IYQ
3)https://www.discoverychannel.jp/0000042566/、https://a-t-g.jp/deonaea-muscipula-4527
4)イラストの使用は本文中あるいはフリーイラストを使用。