Softwind's diary

自然やエコや不思議なこと、健康や楽しいことなど徒然なるままに書いています。どうぞよろしくおねがいいたします。。

はるかなる成層圏 - Walking in the Stratosphere-

はるかなる成層圏 - Walking in the Stratosphere

  新型コロナウィルスの感染拡大により日常生活においても緊張が強いられる今日この頃です。読者の皆さん今日は、いかがお過ごしでしょうか。私たちはほとんどの人が対流圏で生活をしているのですが、より宇宙に近い成層圏(Stratosphere)はどんなところかなと思いを馳せる方も多いのではないでしょうか。このブログの筆者も成層圏やさらにその上空の電離圏などどのような世界なのか、今回は成層圏を垣間み、成層圏を大きく歩いてみたいと思います。 今回のブログは大気ついて知識を深め、対流圏や成層圏とそこに分布するオゾン層にも注目してみたいと思います。高度と気温については、高くなるほど気温が低くなることはよく知っているのですが、成層圏やさらにその上空では、実際どうなのか、それを確認したいと以前から思っていました。といっても、バルーンや観測機器など持っていませんので、このブログ中の高度-気温ダイアグラムの作成に使った成層圏のデータや成層圏の画像は徳島大学総合科学部佐原研究室のyoutube1)とそこに記載されていました“気象庁の同時間に近隣で打ち上げ、観測したデータを使わせて頂きました。”2)ということから、気象庁のデータを使わせて頂きました。 今まで成層圏について知り得る知識が実際と同じなのかどうか、確認することにもつながるでしょう。

図1

f:id:Softwind:20200313221321j:plain

窒素N2と酸素O2とその他の気体からなる大気は図1のように地上から対流圏、成層圏、中間圏と熱圏に分類されており、大気の90%は15 kmより低空の対流圏に存在しています。3) 対流圏の特徴として、大気成分の混合比は一定であること、 また、大気を作る空気は粘性を持つ非圧縮性流体と考えられますので、渦を巻いたり、大循環をしています。 空気を作る気体分子も質量を持っていますので、地表面の重さつまり大気圧は1013 hPa(ヘクトパスカル)で上空に行くに従い小さくなります。対流圏では、空気は対流し断熱膨張機構4)により、化学的には閉鎖系に置かれているので外部との熱のやりとりがない、つまりエンタルピーの変化が0ですので、内部エネルギーは地表よりも上空の方が小さくなります。 つまり、温度は地表よりも上空の方が低下していることになります。 これは大気圧が地表が1013 hPaで対流圏界面では100 hPaであるので、空気が積み重なっていると考えられ、この結果、対流圏は断熱膨張していると言えるからです。 気温が低下する割合は気温減率5)といい0.65℃/100 mの割合で気温は減少していくことがよく知られていますが、大気中の水蒸気の少ない晴天日では乾燥断熱減率1℃/100 mといわれています。 

図23)

f:id:Softwind:20200313213637j:plain

 

対流層界面を過ぎると、次に成層圏に突入しますが、そのあたりの違いは図1と図2を見ますと明らかです。 気温は減少しないで、あまり変化しない領域となります。空気がなくなりますので、強い太陽光を吸収した酸素O2 -これは対流圏から供給されます-は原子状酸素Oとなり、OO2が化学反応してオゾンO3が生成し成層圏にはオゾン層が生まれます。 この反応のサイクル図は図1の成層圏に描きました。約40 km付近がオゾン層のオゾンの濃度が高いといわれています。ここでは気温の変化はないようですので、これを確かめればと思います。 余談ですが、35-40 km付近の気圧7-8 hPa 6)はちょうど火星の地表面の気圧に等しいということで、火星の大気は希薄なことがわかります。 O3は太陽光の紫外部の光と赤外部の波数(波長の逆数)約1140 cm-1(カイザー)を吸収しますので、 オゾンは成層圏でこの波長の赤外線を放射していることになります。図3に概略を示しました。 それで成層圏は気温の低下が妨げられあまり気温の変化がない等温層と成っています。

図3

 

f:id:Softwind:20200313213649j:plain

徳島大学総合科学部佐原研究室のラジオゾンデ成層圏にあげた際のデータを基に高度と気温の変化の図をエクセルで作成したのが図4です。上昇時が黄色のマーカーで、下降時が緑のマーカーで、1000 m間隔の値を用いて図示しました。 標高848 mから放っていますので、その値が基準となりまして、

18.4 ℃です。 下降後、着地(海面のようですが)直前の気温も18.4 ℃でした。 気温の低減が直線上に乗らない高度が6000 m付近にありますが、12000 mまでは正確に気温が低減しているのが確認できます。 ここで、感激して、スゴーイイ、スゴーイイイ(@_@)の一言です。 気温減率を求めると0.635=0.64 /100 mとなり、 これまた標準の値と近い値でこれまた、感動ものです。 ところが、 降下時の気温減率を求めると0.72/100 mとなり、 乾燥断熱減率に近い値ですので、 太陽の位置から、午後になり湿度が下がって大気が乾燥してきたためなのかなと考えられます。 また、 気球が1つ上空で破裂して降下し始めたようなので、 墜落に近い状態で高速落下し温度計の誤差がでたのかもしれません。 とりもなおさず、youtubeでこのような結果を確認できたのは有意義でした。 

図4

f:id:Softwind:20200313213701j:plain

18000 mからゾンデは急に強風にあおられ回転や振動が激しくなりましたが、この付近にジェット気流あるいは偏西風が流れているのが確認できます。 17000 m付近まではほとんど風が無いような状態で上昇しているようでしたので驚きです。 20000-21000 m 付近ではさらに暴風のようです。 ところが、22000 m付近から急激に暴風はやみ、ゾンデは何事もなかったように静かに上昇を続けます。 不思議ですね。 図5のように上空は漆黒でここは成層圏なんだと確認できます。 図5は上昇時の映像を時系列で並べたものです。 20000 m付近からは、普通の生活では体験できない地平線が丸いことがわかります。 地平線に対流層の大気が青白く確認できます。 ジブリの「ラピュタ」の天空の城が音もなく静寂の中を上昇しているような感覚ですね。20000 m付近から気温はあまり変化していなく、 等温層のまっただ中にいるようです。 -61.6 ℃の17000 mからむしろ気温が高くなり、最高到達高度30126 mで -38.1 ℃と約23.5 ℃も上昇しています。 これは先ほどのオゾンの効果によるものと考えられます。

図5

f:id:Softwind:20200313213713j:plain

ゾンデは機材が揺れでぶつかる音、コン、コツンという規則正しい音が聞こえますが、それ以外は音もなく漆黒の上空に向かって上昇します。 そして30000 m、 30126 mで気球が割れたようなので、 残念ながら降下となりました。 成層圏のまだ下の方ですが、 宇宙に近い成層圏の神秘を十分に体験させて頂きました。 気温の方は徐々に上昇しています。 図6は想像ですが、 最高到達高度付近の、はるかなる成層圏の奥の方になんと、Walking in the Stratosphereをしている宇宙服を着た2人の人が目に入ってきました。 楽しそうですね。

図6

f:id:Softwind:20200313213725j:plain

引用文献

1, 2)徳島大学総合科学部佐原研究室、youtubehttps://www.youtube.com/watch?v=8NTaSPHGfic (2020).

3)気象庁、大気の構造と流れ-気温の鉛直分布から見た大気の構造https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/whitep/1-1-1.html (2020). 

4) フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』、断熱膨張

5) フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』、気温減率

6) フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』、 火星